「黄昏(たそがれ)~潮騒」
2012年10月8日
秋晴れ体育の日、椅子に深く腰掛けた私の目の前にある卓上の右隅には、
開かれたいと待っている書籍が山積みで眠っているが
「こんな秋晴れの日に自宅にこもって読書したのでは、
家内の機嫌を損ねかねないだろう」。
読みたい誘惑を我慢し開封を待ち望んでいる書籍を脇目に、
家内のご機嫌と家庭サービスを兼ねて、
体育の日に相応しく、健康的に久々に「アウトドアへGO!」
「元宇品の海岸に行こう!」家内とは直ぐに意見が合った
(いつも仲の良い夫婦です(^O^))
私たち夫婦の間では、南区の元宇品海岸は広島市内で、
最高のスポットと思っている。
今年3月下旬にも、
夫婦で久しぶりに元宇品海岸を散策した時に
「秋頃にまた来たいね」の言葉を夫婦は覚えていた。
何のためらいも無く元宇品海岸に決定した後は、
家内は急いでお手製の愛情弁当を作り昼前には家を出た
(CVS弁当ではなく自宅のむすび弁当を屋外で食べたいと私の我がまま)。
秋の青い晴天に恵まれ、愛車は快適にまっしぐら。
元宇品公園に着くと駐車場は満車だったが、
暫くすると狭い場所に1台が空いた。
弁当にお茶、カメラを忘れずに小走りに階段を駆け下りる。
階段を降りたら直ぐに高くそびえる元宇品灯台の手前には、
樹齢300年のくすの大木がデ~ンと構え、灯台の重厚感をさらに演出している。
家内は軽いテンポで階段をポンポンと少し大股で弾んで降りている。
木陰の階段を早足で降り3分もすると、
一瞬にして目の前に大海原の別世界が飛び込んできた。
私はこのタイムスリップ・・・
何とも言えない別次元への突入する瞬間体感が好きだ。
川端康成の「トンネルを抜けるとそこは雪国だった・・」が脳裏を。
一瞬にして、木陰から眩しく広域な瀬戸内海のパノラマ絵画が飛び込んでくる。
秋の優しい潮の香りが、そよ風コンビで心地良く優しく穏やかに全身を包み込んでくれる。
ここの歩道は、低い海岸の縁を沿ってゆるい蛇行カーブを描く。
若い家族で魚釣りを楽しんでいる微笑ましい親子。
のんびりと一人で釣り竿を垂れている何か寂しそうな中年男性。
裸で寝そべっている初老男性・・・
皆それぞれの想いでここの海を一望、一人占めできるこの景色が好きな人達だろう。
木陰に自転車を停めて、一人で缶ビールとスナック菓子袋を広げて、
ビールと潮風を満喫している男性。
私たちも元宇品の木立と目の前に横たわる瀬戸内海の景色と潮騒を楽しみながら、
ゆっくりと大地と海の堺を噛みしめながら歩く。
少し歩くと、広がる木陰に腰を下ろす場所を見つけた。
目の前に似島を捉え、その前を旅客フェリーや高速艇、
時には小さな釣り船が往来する。
ここには、現実の世界から完全に隔離している自分を感じる空間がある。
ため息混じりに家内と会話する。
「やっぱり ここは ええな~ぁ」俗世間から離れることのできない私達が、
簡単に頭を空っぽにすることが可能な異次元スポットである。
では、そろそろ愛情タップリ詰まった愛妻弁当をいだくことにしよう。
焼き塩サバと軽く焼いた明太子は、私の弁当の必須好物です。
海苔巻きの俵むすびを頬張ると、潮の香りと海苔の風味が口中に拡がり、
お手製弁当の旨さを匠レベルまで簡単に高めてくれる。
大きな船が航海するたびに、海岸に打ちつける潮騒波音は、
至福とは何かを確実に伝え教えてくれる。
食べ終えて腰を下ろしたまま、
家内とゆっくりと会話を楽しんだ「映画の『めがね』を思い出すじゃろ」
「そうじゃね」『めがね』は5年位前に夫婦で観た映画で、
都会のビジネスに疲れた若い女性が一人で、
携帯電話の繋がらない、春の与論島で、
ゆっくりと時間が流れる中で、心の疲れを癒す映画です。
映画を観ている観客は、一緒に黄昏(たそがれ)を感じることができ、
非現実的な憧れの世界の中を泳ぐことができるのです。
私もその映画の中で「黄昏(たそがれ)る、とはこういうことか・・・」
憧れの世界でした。
この海岸には、まさに・・・黄昏があるのです。
本当に不思議な位に時間がゆっくりと流れる環境に
身をおくことができる世界があるのです。
打ち寄せる波の音と、風の音しか無く、テレビもCDも存在しない世界です。
釣りをしている人、木陰で休んでいる人、犬の散歩、自転車や散策で訪れている人、
ここに集まってきている大半の方々は、黄昏を求めている人達だと思いました。
「黄昏の時、そして潮騒の音に身をまかす」
忙しいビジネスマンや苦悩多き時代には、
時には、こんな場所で時間をゆっくりと追っかけながら、
心を洗うことも必要ではないでしょうか。
今回は、是非皆さんに身近で最高のスポットを紹介したくて気ままに綴りました。
たまには、心を休めて黄昏て下さい。
そうそう、大事なことを忘れるところでした。
元宇品公園のもう一つの目玉スポットは「猫島」です。
途中の公園までの道中や海岸では、たくさんの猫たちに必ず出逢います。
私にとって、大好きな猫たちとの出逢いや会話は、
黄昏ではなく「最高の癒し」です。
贅沢にも「黄昏&癒され」の両方が一度に訪れるのです。
元宇品海岸には、猫たちの送迎付きという、
猫大好き夫婦にはこれまた至福の場なのです。
私もここの猫たちの様に、潮騒と一緒に黄昏ていたい。
カテゴリ:「感動感謝」